• トマト農家
  • 肥後あゆみの会 代表 
  • 澤村 輝彦さん
  • SAWAMURA TERUHIKO
  • 日本一のトマトの生産地として知られる熊本県。その中央部に位置する宇城市不知火町で、環境保全型農業と有機栽培によるトマト作りに真摯に取り組んでいる農家の一人が「肥後あゆみの会」代表の澤村輝彦さんです。 「安心して美味しく食べられるトマトを、多くの人に食べてもらいたい」と農薬の使用をやめ、独自の自然栽培方法を確立した今も、さらなる高みを目指して日々奮闘を続けています。 当社オーガニックコスメの原料にも使用している安心・安全のトマトとはどのように作られているのか、澤村さんに語ってもらうとともに、他栽培の野菜や自社加工商品も紹介してもらいました。

    土作りからこだわった、後味がクセになる有機JASトマト

    ──澤村農場では、有機JASトマト、有機JASミニトマト、特別栽培の塩トマトなどが作られていますが、味の特長を教えてください。
    私が求めているのは“後味が良いトマト”です。甘くすることは肥料の配合で可能ですが、澤村農場では自然の野山に育っている野イチゴのような爽やかな味わいを理想としています。 「もう一回食べたくなる」「自然と体が欲しがるような味」「何も受け付けなかったのに、このトマトは食べられた」などとお客様に言っていただけるのは本当にうれしいですね。
    ──塩トマトはいかがでしょうか?
    塩トマトは熊本という土地柄が大きく関係しています。海に面している干拓地なので、土壌に塩分が含まれているんです。そのため天然のミネラルが豊富で、小玉ですが糖度は普通のトマトの約2倍となる8以上。甘さ・酸味・コクのバランスが絶妙で、他にはない塩田特有のフルーツトマトです。
    ──トマトの名産地・熊本でも有機JASトマトは大変珍しいそうですが、澤村さんはいつから有機栽培を始められたのですか?
    私が農家としての一歩を踏み出したのは今から37年前。漁業からメロン栽培に切り替えていた実家でトマト栽培も始めたんです。最初は通常の慣行農業でした。5年目から有機栽培と並行していたのですが、あるきっかけがあって10年目に思い切ってすべて有機栽培に切り替えました。 最初はあまり深く考えずに友人から勧められてメロンの有機栽培から始めました。農薬を減らして除草剤や化学肥料を使わない形です。正直なところ最初は楽して儲かるかな……という思いもありました(笑)。
    ──そのきっかけは何だったのですか?
    初めて手がけた有機栽培のメロンを生活協同組合に出荷したのですが、その際に消費者・生協・農家の反省会のような顔合わせの機会をいただいたんです。手探り状態で作ったメロンなので美味しくないんですよ。でも消費者の方々が「来年は期待していますよ」と言ってくださるんです。2年目も「美味しくない。でも来年期待しています」と(笑)。さすがに3年目4年目と続くと自分でもこのままではダメだな……と猛省して腰を据えて有機栽培に真剣に取り組み始めました。 あと、水俣の農家の方々との出会いも大きかったです。水俣病✳︎のせいで土も水も悪く大変な苦労されている現状を知って、私自身、環境に対する意識が変わりました。
    ✳︎1956年(昭和31年)熊本県最南部に位置する水俣市で、チッソを扱う水俣工場が水俣湾に流した廃液によるメチル水銀汚染の植物連鎖で起きた公害病のこと。

    「チャレンジは自分でやってみなければわからない」

    ──どのような取り組みを始められたのですか?
    「有機栽培にしよう」と決めたものの、最初は手探り状態でした。除草剤・化学肥料・土壌消毒を廃止して、殺虫・殺菌剤を1〜2回まで消滅すると決めても、すべてが未知の世界。当時も有機栽培でトマトを作っている人はほとんどいなくて、先生もいないし本もない。わからないので、良い資材があれば買い、こんな機械が良いと聞けばすぐに買い……。すがる思いで購入して使っては失敗続き。収穫量も減っていくし、トマトも疫病にやられて全滅するし、ハウスに泊まり込んで寝ずに見守るような不安な日々が長く続きました。肥料や堆肥もいろいろ作っては試して、たくさんの失敗をしました。でも、その経験が良かったと今となっては思っています。 チャレンジは自分でやってみないとわかりません。他人から聞いただけではダメなんです。リスクが高くてもやるしかない。失敗して失敗して、またチャレンジして、そうやって10年単位で苦労してなんとか形になってきました。
    ──具体的にどのようなことをされたのですか?
    植物にとっての土や肥料、堆肥は私たちのご飯と一緒だという考え方を、ある農業指導の方から教えられました。人間も良いご飯が健康な体を作りますよね。じゃあ植物も良いご飯を事前に与えれば病気になるのを防げるのではないかと。 私たちの有機栽培方法では、虫がついたり病気になっても薬がありません。ですから何が原因で病気になるのかを突き詰めて考えないと対処できないんです。 「ものを育てるとき、自分たちの周りにある地域特有のものを資材にすればなじみやすい」ということで、まずは自然生態系のバランスが取れた裏山の土を使うことから始めました。 そこに加えているのが、自然のものだけで作った「自家製ぼかし肥料」と、タケノコや山菜などから抽出した天然エキス「天恵緑汁」です。

    これぞ澤村流! 自然に逆らわない自家製肥料と天然エキス

    ──それこそが澤村流環境保全型農業の特長ですね。
    「自家製ぼかし肥料」は、米ヌカ4割、赤土4割、後の2割には魚・牡蠣殻・エビ・カニなどを粉末にしたもの、菜種油を搾ったカス、青米、畑の土などを混ぜています。最初の1週間は高く積み、次に平らにして時々かき混ぜながら1カ月ほどで仕上げていきます。肥料の中の微生物たちが気持ちよく発酵するために、下部分を土にするのがポイントです。コンクリートの上で発酵させると腐敗して酸化するんですよ。植物のために本当に良いご飯作りを試行錯誤して、この成分配分と場所に行き着きました。
    自家製ぼかし肥料
    ──米ヌカの香りがすごいです。
    3日ごとに匂いが変わって、最終的には甘酸っぱくて美味しそうな匂いになるんですよ(笑)。
    天然緑汁
    ──「天恵緑汁」と名付けられた天然エキスの役割はどのようなものですか?
    長年の経験で、植物に出る病気や土の中に出る病気、病気を起こす虫やその時期などがある程度わかるようになってきました。それらに事前に対処するために根っこや葉っぱから天然エキスを吸わせて体力をつけます。人間でいうと点滴やサプリメントのような役割ですね。植物に体力をつけて免疫力を上げ、病気にならないようにしてあげるんです。これらの天然エキスは海藻やクレソン、タケノコなどをそれぞれ黒糖につけているだけです。桂皮や甘草などで作った漢方エキスもありますよ。
    ──本当にすべて天然のものを使われているんですね。
    有機栽培=何もしない、というわけではありません。確かに完全自然栽培は究極の理想の形ではありますが、やはり農家としては収穫量をあげていくことも考えなければなりません。そこでなるべく自然の形に沿うよう、天然のもので作った肥料や堆肥でその時その時の問題点に対処していくような形に行き着きました。でも、今後もさらに研究しなければいけないと思っているんです。
    河川敷に生えている野草を放置し、野草堆肥として使用。写真左は採取したばかりのもので、写真右の土の塊が丸2年たったもの。この野草堆肥を土に入れて栽培するようになってから、今まで茶色く焼けてしまっていた植物の根の部分が、本来の美しい白色になったそうです。

    日本の農業の将来を見据えた取り組み

    「肥後あゆみの会」のメンバーの皆さんが大集合。
    ──このような澤村さんの情熱を支えているものは何でしょうか?
    消費者の方々からの声や、もっと良いトマトを作りたいという情熱などいろいろありますね。今ようやく少しはまともに生産できるようになったので、本当に良いものを多くの人たちに届けたいという思いが大きいです。有機農業で運営できている農家は日本国内で1%もいません。99%ほどが慣行農業で、それが普通になっているのが現状です。私自身、有機農業できちんと運営できる農家になりたいと思っていますし、若い農家の人たちも成功させてあげたい。そのためにどうすれば良いのかというノウハウを教えるために人材育成や研修生の受け入れも行なっています。
    ──澤村さんが代表となっている「肥後あゆみの会」もそのような意図から始まったのですか?
    そうですね。最初は私一人で有機農業を始めたものの周りの農家が化学肥料や除草剤を使っていては意味がないのでは、と思い、地元や知り合いの家を一軒一軒説得に回りました。最初は賛同者が集まっても収穫量が上がらずに離れていく人たちも多かった。できたものを自分たちで売りにも行きましたし。 平成13年に柑橘農家4件、野菜農家2件の6家族で有機農業で自立できる農業を目指して「肥後あゆみの会」を設立し、今やっと理想に品質が追いついてきました。 そうなるとこちらから売りに行かなくても消費者の方が買いに来てくれるようになるんです。これらの経験から、農家は作ることに真摯にエネルギーを使わなければいけないなと実感しています。
    ──有機栽培で農業を運営することは本当に難しいんですね。
    他の農家の方々も農薬を使いたいから使っているわけではありません。日本は野菜に対して形や見栄えに厳しいですよね。そこに合わせようとすると農薬などを使わざるを得ないんです。消費者も流通を扱う人たちも形の悪さなどはもう少し我慢してもらえるとありがたいです。その分、私たちは精一杯努力して、安全性と美味しさを突き詰めた農作物を作っていかなければと思っています。
    木質の燃料を燃やす機械。ハウスを温める燃料も、澤村農場では化石燃料ではなく杉の木を使用して環境に配慮しています。
    澤村農場ではショウガや玉ねぎも栽培しています。完全自然栽培のショウガは、すりおろすと繊維分と香りが強く、少量でもその味わいを楽しめます。
    自社加工所「天芯(てんしん)工房」責任者の岩中桂子さんに商品についてお話を聞きました。
    お客様から一番人気の商品は「有機トマトジュース」です。今まで飲めなかった人でもこれなら飲めるとよく言われますね。他社と比べて濃厚さが違うんです。水を一滴も使わずトマトのみで作っており、「ケチャップを飲んでいるみたい」と言われるぐらいにトマトの果実味が際立っています。また、「塩畑トマトジュース」もフルーツトマト100%で、無塩ですがほんのり塩味を感じます。甘さとコクのバランスが最高なんですよ。 すべての商品が素材本来の味を存分に味わえますので、ぜひお試しください!
    2015年3月より自社で栽培から加工までを一貫して行える加工所「天芯(てんしん)工房」をオープン。本当に安全で美味しいオーガニック商品の数々が用意されています。
  • 取り扱い商品一例(すべて税込)
  • (左上段から)
  • 有機生姜シロップ(180g)1,026円
  • 有機トマトジュース(500mL)1,080円
  • 有機みかんジュース(500mL)1,080円
  • 有機プレミアム塩トマトジュース(500mL)3,240円
  • 有機生姜使用シロップ:マスコバド糖入(180g)918円
  • (左下段から)
  • 有機トマトパスタソース(275g)972円
  • 有機トマトピューレ(275g)864円
  • プレミアム塩トマトケチャップ(275g)972円
  • 商品やトマトのご購入・詳しいお問い合わせについては以下よりアクセスをお願いします。

    肥後あゆみの会 オンラインショップ

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